戦略的に論文のIntroduction(序論)を書こう!

目次

Introductionの流れを作る戦略とは

Introductionは、研究対象の紹介から始めて、本研究の紹介で終わるという定番の流れがある(図参照)。

この流れは、別記事で述べたIntroductionのIM-1, IM-2, IM-3の内容とほぼ一致する。

Introductionの構成を考えるときには、まず、以下の3つに留意しよう。

1. 研究対象着眼点を提示すること
2. 問題提起を行うこと
3. 本研究を紹介すること

着眼点とは、本研究を遂行する上でのポイントとなる新しい方法・アイデア・新たな対象などである。対象の研究に新たな着眼点を持ち込むことによって、あるいは、新たな対象を組み合わせることによって、新しい研究が生まれるのだ。ただし、着眼点を述べるための特別の表現があるわけではなく、研究対象の紹介と同じような表現が用いられることも多い。あえて言えば、IM-2では、現在完了形が多く使われるという特徴がある。現在完了形は、重要な先行研究について述べるときに使われることが多いからだ。さらに、Recentlyなどの強調表現が、着眼点の提示の際に使われることがよくある。

Introductionの内容をタイトルにリンクさせると、読者の理解がより深まるので、この点にも留意しよう。タイトルに含まれる専門用語キーワードのうち、Introductionの最初から登場するものが研究対象で、途中から登場するものが着眼点となるようにするとよいだろう。

以下では、Introductionでよく使われる定番表現を紹介しつつ、Introductionの流れを作るための具体的な戦略を述べる。

Introductionの冒頭文(IM-1)では、定番表現が使われる!

Introductionは、研究対象の紹介/定義から始まることが多い。「生命科学」「臨床医学」「化学」の3分野でのよく見られるIntroductionの冒頭文の定番表現は、図のようになる。これらは、別記事でも述べたように、研究対象がいかに重要なものであるかを読者に訴えつつ紹介する表現である。

Introductionでは、問題提起がポイントである(IM-2)!

最も単純なIntroductionの構成は以下のようになる。

<最も単純なIntroductionの構成>
1. 背景情報の提示
2. 問題点(疑問点)の提示
3. 本研究での問題解決の方法

ここでポイントとなるのが、問題提起、すなわち、問題点を明確にすることである。何が問題なのか、何が課題なのか? 論点を明確に示さなければ読者には伝わらない。気を付けたいのは、背景情報を羅列するだけで、それが意味することの判断を読者に委ねないようにすることである。日本人は、とかく判断を読者に委ねる傾向があるので、特に注意しよう。数字を羅列した統計情報を延々と述べて、何が言いたいのかはっきりしない論文をよく見かけるが、全くもったいない話である。これでは、読者は退屈するだけで、何が言いたいのかを認識できないはずだ。背景情報を説明するだけで終わらないようにすることが肝心である。

別記事でも述べたように論文で提供される情報は、以下の2つに分けることができる。

客観的な情報(機能的価値)
・主観的な情報(情緒的価値)

科学論文は、基本的には機能的価値をもたらすものだ。そこに、読者の感情に届いて印象に残る情緒的価値を織り込むことが、重要なテクニックとなる。このようなテクニックに必要なのが、決まり文句である。その典型が、IM-1やIM-2のStep-2の表現である。

・Step-2の表現は、以下の3つに分類できる。

Step-2の表現の代表は、問題提起の表現である。しかし、それ以外に、必要性を述べる表現可能性を述べる表現なども用いられる。何を読者に訴えたいのかを明確にすることが肝心だ。

問題を提起する(逆説:Howeverなどで始まる表現)

必要性を訴える(因果関係:Therefore/Thusなどで始まる表現)

可能性や予想を述べる(suggest/mayなどを使う表現)

Introductionにおける繰り返し構造

最も単純なIntroductionの構成を前述したが、実際には、このような単純な構造の論文はあまりなく、もう少し複雑だ。たくさんの論文のIntroductionを眺めているうちに、多くの論文で共通の構造があることを見つけた。それは、図に示す「背景→問題→解決」の繰り返し構造である。これについては、別記事で述べたので参照していただきたい。IM1→IM2→IM3の流れに沿って問題点を絞り込んで行く過程で、このような繰り返し構造が用いられる。ここでも、流れを作る歳のポイントは、問題/課題の提示である。

本研究を紹介する定番表現がある(IM-3)!

IM-3の冒頭では、定番の表現が使われることが非常に多い。次の図を見れば、一目瞭然だろう。IM-3の冒頭文では、we主語の文が非常に多い。IM-1やIM-2では、we主語文が少ないことと対照的である。従って、HereやIn this studyなしで、Weで始まっても十分にシグナルとなるであろう。

一方、IM-3の最終文では、we主語文の割合はずっと少なくなり、resultsやfindingsなどの研究結果を意味する主語が多くなる。展望などを述べて最後を締めることがよくあるが、様々なパターンが存在する。

まとめ

Introductionを書くための戦略として、どのような流れを作るのかと、どのような英語表現を用いるのかの2つの面から考えることが重要だ。英語表現に関しては、読者の注意を引きたい場面では定番の表現があることが多い。しかし、Introductionの展開のすべての局面において、定番の表現が使われるわけではない。従って、どのような英語表現を使うべきかが明確な場合もあるし、それほど明確でない場合もある。定番の英語表現を中心に、流れと英語表現の両方のバランスを考えながら執筆することが必要であろう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次