英語論文は、どの順に執筆すべきなのか?

研究論文を書くときは、何度も手直しすること重要だ。それを考えると、書く順番にこだわるよりは、書けるところから思いついたままに書くのを基本にするのがよいと思う。ともかく書き始めることを最優先にすべきであろう。そうは言っても、ある程度は戦略を持って書かないと、方向性を間違う心配がある。ここでは、論文をどの順に書くべきかを中心に、英語論文執筆の手順について考えてみたい。

目次

まずは、図表を作って流れを考えよう

もちろん分野による違いはあるだろうが、科学英語論文の中心は図表である。どのようなデータを提示するのか? それを中心に論文のストーリーが組み立てられることになる。つまり、「どこから書き始めるか」の答えは、図表が登場するResultsから書き始めるである。中でも、図表が最初ということになる。その際に注意すべき点は、図表なしに論文を書き始めないことだ。図表を見ないで書くResultsは、まさに妄想を書いているようなものである。実際に図を見ながら冷静に考えると、かなり違っていたというのはよくあることなのだ。

図表を作成する際には、少し多めに候補を作ってみよう。それを、いろいろ並び替えてみて、一番、論理的なストーリー展開になるものを選ぶ。その際、うまく填まらない図を没にすることも必要だ。ここは最重要ポイントなので、できれば共著者とも議論しながら、よくよく考えてみよう。

Resultsの次は、結論(主な結果)を考える

(のドラフト)を作って順番を決めたら、Resultsを書こう。まずは、仮の小見出しを作るところから始めるとよい。「図一つにつき、小見出し一つ」(あるいは、「図一つにつき、パラグラフ一つ」)というのが考えやすい。また、Fig. 1からFig. 2、そしてFig. 3へと、つながりを確認しながら書くのが望ましい。一方で、つながりを考えるのは後回しにして、小見出しごとにResultsを書いてみるのもよいだろう。

だいたいのストーリーの見通しがついたら、次は結論が何かを考えよう。結論は、Discussionの一部になることが多いが、ここではDiscussion全体を考えるのではなく、あくまで、「結論あるいは主な結果は何か」を見極めるのだ。結論(あるいは主な結果)が決まれば、それに合わせてIntroductionのストーリーを考え始めることができる。

逆から考えて、Introductionを創作する

研究論文のIntroductionでは、Thesis statement(「主題」と訳されることが多い)を示すことが重要だ。Thesis statementは、Research questionと同等と解釈されることも多いが、むしろ、結論に近いものであろう。一方、Research questionは、研究計画書に書かれるようなものである。従って、下のようなイメージで考えるとわかりやすい。

研究計画書 ← Research question

研究論文 ← Thesis statement(≒結論)

英語論文を書くときに、Introductionの最初から始めるのはやめた方がよいかもしれない。どうしても時間軸で考えてしまい、研究計画書と同じResearch questionを提示してしまいがちだからだ。実際に研究を遂行する際には、実験ごとに作業仮説を立てて進めていく。何度もこれを重ねていくうちに、得られた結果は最初のResearch questionから大きくずれてしまうことは、むしろ自然な流れである。このような研究手法を、仮説生成型研究と呼ぶことがあるが、実験系の研究はまさにその典型である。そのため、研究計画書のResearch questionを論文に書くと、研究の実態との乖離が大きくなりすぎる懸念がある。

このような「乖離」を論文に持ち込まないようにするためには、Introductionを書く前に結論主な結果を見極めて、逆からIntroductionを組み立てることが必要だ。論文は、実際に起こったことを時間軸に沿って書くものではない。結論に合わせてストーリーを創作するのだ。Thesis statementとしてResearch questionを書いてもよいが、それは研究計画書のResearch questionではなく、論文を書くために創作したResearch questionにすべきである。言い換えれば、答えを見てから問いを作るようなものであろう。

Introductionを書き始める前に、Introductionの最終パラグラフ(特にThesis statement)で何を書くかを考えよう。Introductionでは、そこに向かってストーリーを作っていかなくてはならないのだ。また、別記事でも述べたように、IntroductionとDiscussionを呼応させることが重要である。呼応というのは、同じようなことを書くと言うことだ。つまり、Introductionの最後に、主な結果や結論を先出ししてもよいのだ。

「Introductionで問いを立てて、Discussionで答えを書く」という形式にこだわる必要はない。「Introductionで答えを書いて、Discussionでも答えを書く」。これがアメリカ式のAcademic writingで、定番の手法なのである。

まとめ

以上、英語論文を書く手順をまとめると次のようになる。まずは、手持ちの図表を使ってできる最も論理的なResultsの展開を考えよう。ここが、うまくできれば、残りはほとんど型どおりの展開といっても過言ではないだろう。

なお、Discussionを書く際には、次のような内容をパラグラフごとにテーマを決めて書くとよい:強調すべき新発見、メカニズムの考察、先行研究との比較、課題、将来展望など。

Abstractを書くときには、Introductionの内容を参照しつつ、Titleに組み込むキーワードも一緒に考えよう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次