研究者のための英語論文の読み方のコツ(3):流れと論理展開の原則を理解する

英語論文を読み進める際には、流れと論理展開に着目することが重要だ。論文の論理展開には、一定の型が使われるからだ。論文で使われる論理展開のポイントについては、別記事にもまとめてあるので参照しよう。

論文の流れと論理展開を理解する際に最も重要なポイントは、著者の主張は何かを探すことである点を意識しよう。ここではそのための4つの戦略を示す。

目次

主張を探す

論文の内容を理解するための最短コースは、著者が言いたいことは何かを見抜くことである。著者が言いたいことには、通常、主観が含まれるので、それが含まれているところを見つけるとよい。そのためには、事実と解釈/主張を区別することである。

文章は、以下の2つの要素で成り立っていることが多い。

  • 客観的な情報(機能的価値)
  • 主観的な情報(情緒的価値)

論文では、客観的な情報を述べることが多いのだが、一方で、主張を述べるときには主観的な表現になりやすい。従って、主張を探すためには情緒的な価値をもたらす部分に注目するとよいことになる。しかも、そのような部分には、決まり文句が使われることが多いという特徴もある。例えば、IntroductionのIM-1やIM-2のStepでは、以下のような構造が一般的である。

  • Step-1(背景・先行研究)→ 事実
  • Step-2(問題・課題)→ 解釈/主張

従って、情緒的価値をもたらすのはStep-2であり、Step-2が重要だということになる。

Step-2の代表的な表現としては、Howeverなどで始まる問題提起の表現と、Thereforeなどで始まる必要性を述べる表現がある。以下のような表現である。

Howeverで始まる表現:逆説(問題提起)

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例文役割
However, little is known about …問題
However, the roles of remain poorly understood.問題

Therefore/Thusで始まる表現:因果関係(必要性)

例文役割
Therefore, there is an urgent need to develop …必要性
Thus, understanding the roles of is critical for …必要性

もちろん、著者が言いたいことは一つではない。場面場面で、主張を確認していくことが重要だ。

つながり(旧情報)を追う

文章において最も重要なポイントは、文と文のつながりである。つながりが不明確な文章は、一文ごとにバラバラで意味不明といってよいだろう。従って、文と文がどうつながっているのかは、常に意識しておきたい最重要ポイントである。通常、文と文のつながりは、同じ言葉(キーワード)の繰り返しによって作られている。このような一度登場したキーワードのことを、ここでは旧情報と呼ぶことにする。旧情報を注意して追うことによって、つながりが見えてくる。もし、旧情報のない文があったら、そこは要注意だと思って慎重に読み進めよう。

ABT構造を探す

ABT(And/But/Therefore)構造については、別記事でも述べたの参照しよう。論理展開は、And(同等関係)とBut(対立関係)Therefore(因果関係)で成り立っている。そこで、重要なポイントは、ButやThereforeの後に示されることが多いので、特に注意しよう。一方、Andのつながりは流れが分かりにくくなる傾向があるので要注意だ。

パラグラフ構造の原則を確認する

パラグラフは、通常、以下の3つの要素で構成されている。

topic sentence(必須・最重要)
  トピックの導入、または主張
supporting sentences(必須)
  詳細な説明と例
concluding sentence(オプション)

パラグラフごとに、一つの話題を取り上げることが多いので、まずは、パラグラフ単位で著者が言いたいことを考えよう。その際に、concluding sentennceが最後にある場合は、そこに注目しよう。ただし、明確なconcluding sentenceがないパラグラフも少なくない。その場合には、まず、topic sentenceに注目して、パラグラフ内の流れや主張を考えよう。

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