複雑なto不定詞の使い方:英語論文のto doは「〜するために」だけではない!

to不定詞の用法としては、副詞句・形容詞句・名詞句の3つがあって複雑だ。副詞句は、主に文頭動詞(過去分詞)・形容詞の後で使われる。「〜するために」の意味で使われる文頭のto不定詞句が最も特徴的であるが、to不定詞の用例全体における割合は10%以下にすぎない。形容詞句名詞の後または文の補語として用いられ、名詞句主語となる。「〜するために」の意味の副詞句が最も多いが、文頭以外の用例では、副詞句なのか形容詞句なのかが不明確になりがちなので注意しよう。

まずは、以下のようなto不定詞をうまく使い分けよう

目次

to不定詞(to+動詞)の動詞ランキング

「to+動詞」ランキングのトップ6は、次のようになる。以下では、上位2つ(to beto identify)の用法について考えてみよう。

to+動詞」のTop 6

to be

to identify

to determine

to investigate

to develop

to assess

to beの前に来る語

to beの前に来る語は、過去分詞または動詞が中心となる。ここでの、beには第2文型受動態の2種類の用法が含まれるので注意しよう。

過去分詞+to be

「過去分詞+to be」のランキングのトップ5は、次のようになる。注目すべき点は、これらはすべて第5文型受動態だということである。

Dec1 was found to be a transcriptional regulator

(Dec1は、転写調節因子であることが見つけられた)

のような文は第5文型なので、beの主語は文の主語(Dec1)と一致するという特徴がある。

なお、to be以下は、文法的には補語である。形容詞句だが、名詞を修飾するものではなく文の主要素となっている。

「過去分詞+to be」のTop 5

found to be

shown to be

known to be

thought to be

considered to be

なお、文の主要素第5文型については、以下の別記事を参照しよう。

動詞+to be

「動詞+to be」のランキングのトップ4は、次のようになる。これらはすべて第2文型であり、to be以下は補語となる形容詞句だ。

the underlying mechanism remains to be determined

(根底にある機構は、まだ決定されないままである)

のような文である。

「動詞+to be」のTop 4

appears to be

remains to be

seems to be

proved to be

なお、ここでのbeには、第2文型の動詞である場合と、過去分詞を伴って受動態を作る場合とがある。

to identifyの前に来る語

to identifyの前に来る語には、過去分詞動詞のほか、名詞の場合もある。

過去分詞+to identify

「過去分詞+to identify」のランキングのトップ4は、次のようになる。これらはすべて第3文型受動態の例である。to identify以下は、「〜を同定するために」の意味の副詞句となる。

logistic regression was used to identify factors

(ロジスティック回帰分析が、因子を同定するために使われた)

のような文である。上述の第5文型受動態の場合とは意味が違うので注意しよう。

「過去分詞+to identify」のTop 4

used to identify

performed to identify

needed to identify

developed to identify

動詞+to identify

「動詞+to identify」のランキングのトップ4は、次のようになる。これらの動詞の後のto identify 〜は、目的語または補語となる名詞句である。

The aim of this study was to identify predictors

(この研究の目的は、予知因子を同定することである)

のような文である。

「動詞+to identify」のTop 4

sought to identify

was to identify

aimed to identify

help to identify

名詞+to identify

「名詞+to identify」のランキングのトップ4は、次のようになる。 これらの例で「to identify」 は、主に名詞を修飾する形容詞句として用いられる。「名詞+to不定詞はよくある用法とは言えないので、「方法+to不定詞」「能力+to不定詞」などのよく使われる組み合わせに限定して用いるべきだろう。

we developed a method to identify

(我々は、〜を同定する方法を開発した)

「名詞+to identify」のTop 4

approach to identify

analysis to identify

method to identify

ability to identify

よく使われる組み合わせに限定すべきである理由は、上の例のような名詞を修飾する形容詞句「〜するために」の意味の副詞句との区別が分かりにくいからだ。以下の例の意味には、「〜を同定するために遺伝子スクリーニングを実行した」なのか「〜を同定する遺伝子スクリーニングを実行した」なのかの2つの可能性があるので要注意だ。

we performed a genetic screen to identify factors required for

(我々は、〜に必要な因子を同定するために、遺伝子スクリーニングを実行した)

動名詞句・現在分詞句との使い分け

そもそも、動名詞現在分詞はどちらも〜ingと形が同じなので区別が難しい。さらに、to不定詞句と使い方が重なってくるので、ますます厄介である。ここでは、to不定詞句名詞的用法動名詞句との使い分け、名詞の後ろで使うto不定詞句現在分詞句(形容詞的用法)の使い分けについて考える。なお、副詞的用法は、to不定詞句と現在分詞句とでは全く使い方が違うので迷うことないだろう。

to不定詞句(名詞句)と動名詞句の使い分け

この2つの使い分けは、比較的シンプルである。目的語や補語にはto不定詞句主語には動名詞句と覚えておけばよい。to不定詞句を主語に使う人もいるかもしれないが、少なくとも論文ではやめておいた方がよい。

以下のよう使い方が考えられる。

A major challenge is to understand how Dec1 regulates gene expression

(主な課題は、どのようにDec1が遺伝子発現を調節するのかを理解することである)

Understanding the causes of the disease is essential for developing effective therapies

(その疾患の原因を理解することは、効果的な治療法を開発するために必須である)

なお、後半のdeveloping 〜も動名詞句である。このように動名詞句は、前置詞句の中身を作るときにもよく使われる。

to不定詞句と現在分詞句の使い分け(形容詞句)

名詞を後ろから修飾する形容詞的用法では、to不定詞句と現在分詞句とに以下のような使い分けが考えられる。

we developed a new method using a combination of

(我々は、〜の組み合わせを使う新しい方法を開発した)

we developed a method to identify

(我々は、〜を同定する方法を開発した)

この場合、method to useやmethod identifyingはあまり使われない。この違いを明確に説明するのは難しいが、to不定詞は未来志向と言えるかもしれない。「method using 〜」は、「method that uses 〜」関係代名詞を使って書き換えることができる。「method to identify」の場合は、同様に書き換えることができない訳ではない、といったところだろうか?

ひとつ注意したいのは、usingを使う上の例では、「〜の組み合わせを使って、新しい方法を開発した」という意味にも解釈できることだ。動名詞句には、形容詞的用法だけでなく、副詞的用法もあるからである。より正確性を重視する場合は、関係代名詞を使う方が無難であろう。一方で、「method to identify」のようなよく使う表現には、誤解の余地は少ないと言える。

まとめ

このようにto不定詞の用法には、副詞句・形容詞句・名詞句の3つがあるので複雑だ。まずは、「〜するために」の意味の副詞句なのか、そうではないのかを区別しよう。次に、「〜するために」でない場合は、直前に来る語が何かを確認しよう。それがよくあるパターンなら、安心だ。そうでないなら、要注意である。

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