英語論文の書き方を学ぶためには、実際に書いてみるのがよいと思う人が多いだろう。しかし、簡単に書いてみることができないのが研究論文だ。確かに「論文もどき」なら書いてみることができるが、それでは、深い理解には至らない。はじめて研究論文を書く際には、全精力をつぎ込んで、自分史上最高のパフォーマンスを発揮しなければならないのだ。多くの人に取って、学位を取得するための正念場だろう。そのため、簡単には練習はできない。
そこで、実践してもらいたいのが、関連論文の分析だ。もちろんそのための方法は、学ぶ必要がある。是非、英語論文初心者のための5ステップに従って、関連論文を分析してみよう。ここでは、別記事のステップ1から4をおさらいして、何を理解すべきかについて述べる。これらのステップは、実際に論文を書きながら同時並行で学ぶ方が効率的ではある。しかし、それでは時間がかかってしまう。時間短縮のためには、関連論文を分析することによって、事前にポイントを学んでおきたいところだ。
母語でないハンディをどう克服するのか(ステップ0)
母語でない英語で論文を書こうとすると、思った通り自由自在に書けないことにイライラすることが多い。ここで避けるべきことは、自分勝手なアイデアで書こうとしないことである。たとえ思った通りに書いたとしても、あとで何度も見直して、大幅に修正しながら仕上げる必要があるだろう。英語で書くときには、そのようなスタイルを避けて、最初に十分な戦略を練ることの方が近道になる。つまり、英語で論文を書くときには、書き方のスタイルを変えなければならないということだ。思いつくままにいきなり書き始めるのではなく、何をどのように書くのかを十分に整理してから書き始めるというやり方に変えるべきであろう。
そのためには、「型を学んで型に当てはめる」ことがよい整理となる。このようなやり方は、母語であっても王道と言えるであろう。
研究はまねることである
Previous studies
→Problem
→Research question
これが、研究の進め方の本来の流れである。少なくとも、論文のIntroductionではこのように書く。しかし、実際には以下のようになることが多いのではないだろう。
Previous studies
→New idea (innovative?)
→New research
先行研究から新しいアイデアを得て、新しい研究を始める訳である。しかし、この新しいアイデアは、本当に革新的(innovative)なものだろうか? 研究対象を変えるなど、ちょっと目先を変えただけの派生的な研究も多いと思う。もちろん、そのこと自体に問題はない。ここで考えたいのは、論文のスタイルも、先行研究から派生させればよいということだ。「まねる」ということは、悪いことではない。むしろ、母語でないハンディを克服するためには、最も効率的な方法であろう。型は、まねるものなのだ。
関連論文を集めよう
関連論文を集めるときのポイントは、以下の通りである。
まずは、いい論文を5編集めて比較してみよう。
関連論文から学ぶべきこと
関連論文から学ぶべきことをまとめると、次のようなる。
関連論文の分析方法(学び方)
データに関係することを除くと、関連論文で分析すべき点は、以下のようになる。同じような研究なら、そのままテンプレートになることもあるので活用しよう!
分析の中では、以下のようなことは必ず検討しよう。
- IMRaD型で書くのか?
- IMRaDの各セクションで、何をどのように書くのか?
- 決まったパターンがあるのか?
- どのような英語表現を使うのか?
実際に分析を行う際には、以下で紹介する原則を活用しよう!
研究論文特有の構造を学ぶ(ステップ1)
研究論文には、決まった構造がある。まずは、これを理解しておこう。
セクション見出しを確認しよう
生命科学系を始め、多くの分野で、論文の構造はIntroduction, Methods, Results, Discussion (IMRD)型である。しかし、中には、Conclusionを足した、IMRDC型の論文もあるだろう。特に、オンラインジャーナルのテンプレートには、そのようなものが多い。
また、化学系の論文では、Introduction, Methods, Results&Discussion, Conclusion (IM[R&D]C)型が多い。実際に目標とするジャーナルでどうなっているかを調べてみよう。見出し・小見出しの付け方のような、細かいところを普段から意識しておくことが大切なのだ。小見出しに関しては、IntroductionとDiscussionでは小見出しなし、MethodsとResultsでは小見出しありの場合が多い。
Introductionの展開とDiscussionとの呼応を確認しよう
別記事で述べたIntroductionのMoveとStepを確認しよう。また、TitleとAbstractも合わせて読んで、研究対象は何か、着眼点は何かを考えよう。できるだけ、「背景→問題→解決」のストーリー展開も見つけよう。その際に、「情緒的価値」をもたらすキーフレーズに注目することも大きなポイントだ。自分の論文でも使えるフレーズだからである。
IntroductionとDiscussionあるいはConclusionとの対応関係や類似性は特に重要なので、確認してみよう。予想以上に、同じようなことが、少しだけ表現を変えてIntroductionとDiscussionの両方で述べられているのに気づくと思う。Introductionの最後に、主な結果や結論を述べている論文は意外に多いのだ。
英語的な論理展開を学ぶ(ステップ2)
日本語の文章を英語の文章と比較してみると、明らかに論理性が欠如していることに気づかされる。そのため、日本語の論理で書かれた論文は、多くの英語論文の読者にとってとても分かりにくい。因果関係が不明確で論理が飛躍しているし、そもそも前後の文で、話がつながっていないことがよくある。箇条書きを連ねたような文章が非常に多いのだ。
ポイントは以下の2つだ。
(1)すべての文に旧情報を入れて、前の文とのつながりを作る。
(2)因果関係が成り立っているか、論理的に飛躍がないかを考える。
論文特有の英語表現を学ぶ(ステップ3)
研究論文では、ある程度、決まった表現が多くの論文で共通に使われている。特に、上述した「情緒的価値」をもたらすキーフレーズは重要だ。これを中心にストーリーが展開されるからだ。論文を分析する際には、特に注意してチェックし、使えるフレーズとして収集しておこう。その際に、どこで使うキーフレーズなのかを、MoveやStepと関連づけて理解することが重要である。
文の構造分析で文法力を鍛える(ステップ4)
文法力を鍛えるための方法として、文の構造分析を強くお勧めしたい。その際に、教材として関連論文を使うのが効果的だろう。ある程度の数を実際にやれば、着実に進歩があるはずだ。実際に自分で書いてみる練習に比べると、人が書いた文章を分析するだけだから、圧倒的に短時間で効率よく学習できる。当然、分析できない文もあるだろう。その場合は、「英文法大全」などで文法のルールを調べよう。それでも分からなければ諦めていい。分析できないということは、その部分を参考に論文を書けないというだけのことだ。
自分の理解できる範囲の文法を使って論文を書く。これは、致命的な文法的誤りを防ぐために必須のことだ。特に、翻訳ツールを使って日本語から英語に変換した場合は、注意が必要だろう。「DeepLを使って翻訳し、GrammarlyでチェックしたからOK」などということは、絶対にあり得ない。長くて複雑な日本語を英語に翻訳すれば、DeepLも間違えるし、Grammarlyもチェックできない。必ず自分の目と頭でチェックしなければならないのだ。
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